食べて美味しく体にうれしい発酵食

発酵食品の数々

ここ数年で脚光を浴びている発酵食品ですが、実はずっと前から私たちにとって身近な存在です。朝食のメニューを思い浮かべてみるだけでも、味噌汁の味噌やかつお節、納豆、しょうゆ、ぬか漬け…と、たくさんの発酵食品を、毎日口にしていることがわかるのではないでしょうか。

そもそも発酵とは、酵母や細菌(乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、放線菌など)、カビ(麹こうじカビ、青カビなど)などの微生物(=発酵菌)が出す酵素によって、人間にとって有益な物質を作り出す反応のことを指します。そして、食材を発酵によって変化させたものをまとめて発酵食品と呼んでいます。発酵食品では、原料が微生物によって分解された結果、元の食材にはない栄養成分や美味しさが加わったり、体に良い成分が増えたりします。また、発酵菌が、善玉菌として働いてくれるという特徴もあり、その価値は元の食品より何倍にも増しているのです。

【発酵食の3つの利点】

1)栄養面からの働き(食品の一次機能)

素材そのものより豊富な栄養を持つ。

  • 素材の分解されなかった成分
    タンパク質・脂質・食物繊維・ビタミン 等
  • 微生物の代謝産物
    アミノ酸・酵素・ビタミン・ミネラル・アルコール等
  • 微生物の菌体と菌体成分

2)嗜好面からの働き(食品の二次機能)

発酵により豊かな味や香りが生まれ、うまみが出る。

  • 食材を発酵微生物が分解(発酵)して食材にはない美味しさと香りがある。
  • 美味しさは脳の栄養。

3)予防面からの働き(食品の三次機能)

抗酸化物質や善玉菌を豊富に含む。

  • 活性酸素の消去作用
    発酵により抗酸化力が増強されたり、新たな抗酸化物質が作られたりする。
  • 免疫系の賦活作用
    発酵菌(酵母)が小腸に定着して免疫機能を活性化する。

天然酵母の健康効果に着目

こうした発酵食と健康の関わりをテーマのひとつとして研究していたのが、生活医学の創始者であり、ユー・アイ・クラブの創設者である多田政一博士です。なかでも「元来農耕民族であり長い歴史の中で菜食に合った体質になっている日本人には、穀類を発酵させる天然酵母が合っている」として、みそやしょうゆなど日本古来の発酵食をつくる天然酵母と腸内微生物の関係性に、昭和初期から着目していました。

天然酵母飲料の天然酵母

酵母とは、5~10ミクロン(1ミクロンは1ミリの1/1000)の肉眼では見えない微生物です。酵素を生み出して食材を分解し発酵食品を作ったり、酵素を工業的に製造する際にも利用されている、まさに「酵素のお母さん」と言える存在です。

酵母の中でも天然酵母は、家付き酵母や蔵付き酵母のように、野生の酵母が時間をかけて育ったものです。日本人は、この天然酵母で穀類を発酵させたみそ・しょうゆ・酒・ぬか漬けなどを、健康に役立つ食品として大切にしてきました。しかし、現在、発酵食品の製造に使われている酵母の多くは、単一の菌を工業的に純粋培養した、いわば養殖もの。また、流通上の問題から、アルコール添加や火入れがされて酵母が死滅しているケースも多く、本来の発酵食品は失われつつあります。そんな時代の訪れを危惧していたのが、多田政一博士でした。「人間が生命体である以上は、生きている食べ物が必要だ」という考えのもと、力強い天然酵母を補給できる天然酵母飲料を、1950年(昭和25年)に完成させました。